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狂犬死す

俳優・渡瀬恒彦が亡くなった。

若手時代はやくざ映画で、ベテランといわれるようになってからは刑事ドラマで知られる俳優だが、ケンカ最強という伝説でも知られていた。

この渡瀬恒彦ケンカ最強という伝説には、個人的にかなり説得力がある、と思っていた。

というのも渡瀬恒彦は若山富三郎萬屋錦之介亡き後、殺陣がもっともうまい俳優と言われていたからである。

殺陣のうまさは、単なる力の強さや体の大きさなどではなく、運動能力・身体能力や勘の良さがなければできない。近衛十四郎若山富三郎は殺陣もうまかったが、実

際のケンカも強かったといわれている。

よく安岡力也や宇梶剛志などが芸能界のケンカ最強の男として名前があがるが、190㎝近い身長で身体能力が高い日本人はまれであり(安岡力也はハーフだが)

日本人の場合もっとも身体能力が発揮できるのはせいぜい175㎝程度までだろう。(初代タイガーマスク佐山聡も171㎝程度)

そう考えると渡瀬恒彦の174㎝という身長はリアルな説得力がある、また実際に時代劇でみせる殺陣の素晴らしさは、渡瀬恒彦最強説をかなり信憑性のあるものにし

ている。

しかし、残念ながらやくざ映画や刑事ドラマで人気を得た渡瀬は時代劇に出演することが少なかった。

1970年代では、映画「赤穂城断絶」で千葉真一と、ドラマ「影同心」で室田日出男と迫力ある一騎打ちをみせているが(いずれも監督は深作欣二)、2000年代では

高嶋政伸主演の「十手人」というドラマの同心役ぐらいしか記憶がない。(渡瀬が殺陣を披露する場面は少なかったが、その少ない機会に見せる殺陣は見事だった。)

そして最強と言われた男もやはりガンには勝てなかった。

今は故人の冥福を祈るとともに、時代劇役者としての渡瀬恒彦を再評価する上でも、長くソフト化されていない「影同心」シリーズのDVD発売を強く望む。

(平成になってからも何度かつくられた「子連れ狼」なども、本来は渡瀬恒彦主演でリメイクされるべきだった、と密かに思っている。)

※権利関係のせいか、こちらも長くソフト化されていない「鉄砲玉の美学」もこの機会にDVD化できないだろうか。あの映画を観ないと松田優作主演「蘇える金狼」や石

井隆監督「GONIN」のラストが何故あのようなことになったか、若い世代はわからないのではないだろうか。