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未完の死

<訃報>谷口ジローさん69歳=漫画家「孤独のグルメ

毎日新聞 2/11(土) 23:28配信

<訃報>谷口ジローさん69歳=漫画家「孤独のグルメ」

 

漫画家の谷口ジローさん=東京都東村山市で2008年11月、丸山博撮影

 「『坊っちゃん』の時代」や「孤独のグルメ」などの作品で知られる漫画家の谷口ジロー(たにぐち・じろー、本名・谷口治郎=たにぐち・じろう)さんが11日、死去した。69歳。葬儀は家族のみで営む。

 

漫画家の谷口ジローが亡くなった。

亡くなったこと自体にも衝撃を受けたが、メディアにおける扱いの軽さにも同様の衝撃があった。

記憶している限りyahooニュースに記事が載ったものの、数多くのニュースの中に埋もれるまで半日とかからなかった。

黒澤明が亡くなった時、こんなあっさりとした扱いだっただろうか。手塚治虫の時はどうだっただろう。

例えば将来、宮崎駿北野武が亡くなったら、国民的あるいは世界的ニュースになっていたはずだ。

文字通り不世出な表現者であった漫画家・谷口ジローを喪うということは決して大袈裟ではなく日本文化の大きな損失である。

しかし、作品の価値に比べて谷口ジローの知名度は極めて控えめなままであった。

多くのメディアで代表作を「孤独のグルメ」としているのも、ファンの一人としては納得のいかないところがあった。

事件屋稼業」でコンビを組んだ関川夏央との共著「『坊ちゃん』の時代」は当然としても「遥かな町へ」や「犬を飼う」、最近映画化された「神々の山嶺」など、本来もっと

代表作にふさわしい作品があったはずだが、そうした作品名をあげているメディアはほとんどなかった。

作品の質の高さに比べて知名度やメディアの扱いが低く、また残念ながら若くして亡くなってしまった映画監督今敏を思い出さずにはいられなかった。

この人は、漫画界では大御所といえる地位だったにも関わらず、2000年代にはいってからの連載でも明らかに長期連載を前提として描かれながら、未完のままになっ

ている作品が少なくない。

漫画アクションに連載された「シートン~旅するナチュラリスト」も動物を描くとともにシートンの子供のころからの歩みを時系列にこだわらず描く、という意欲作だったが第4章

で止まったままである。

「冬の動物園」という作品もある。これは谷口ジローの自伝的作品で昭和40年代の世相や谷口から見た当時の漫画界の状況など、興味深く味わい深い作品だった

が、これも単行本1巻で止まったままだった。

こうした作品の続きが、いや谷口ジローの新しい作品が永遠に読めないという事実をまだ受け止めきれないでいる。

せめてフランス同様日本でも、谷口ジローという漫画家の評価がその実力にふさわしいものになることを祈るばかりである。