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「無銭飲食だけは、ききゃあせんど」

映画「県警対組織暴力」を観た。

ビデオで観た頃も含めると、何度目の鑑賞になるかわからない。観れば観るほどよくできた映画だと思う。(笠原和夫による脚本は特に)

監督は、この時期(1972年の「人斬り与太」シリーズから1976年の「やくざの墓場」あたりまで)神がかっていたとしか言いようがない深作欣二

※深作はこの間にテレビでも「必殺仕掛人」「傷だらけの天使」「影同心」などで印象深いエプソードも撮っていたのだから、この当時は超人的な仕事量である。

監督も油がのっていたが、俳優も主演の菅原文太から松方弘樹金子信雄、梅宮辰夫、川谷拓三など絶好調という感じである。

後に三代目水戸黄門となる佐野浅夫などがスパイスとして実によく効いていたのだな、と今回の鑑賞で改めて感じた。

食うという行為が実は隠れたテーマとなっており、序盤の屋台のシーンや松方弘樹が茶漬けを食うシーン、「米櫃荒らされて…」「闇米食ろうて…」といったセリフなど映画全

体の通奏低音となっていることがわかる。その序盤のコミカルなやりとりが実は伏線となっており、後半に意外な形で回収されるという笠原和夫の脚本は、さすが本人自身が

この映画は傑作、と自信を持って言っているだけのことはある。

仁義なき戦い」シリースもそうだが、深作欣二笠原和夫のコンビは肉体のアクションと言葉のアクションが混然一体となった魅力がある。

この映画での言葉のやり取りの生み出す生理的快感は、他の監督と脚本家のコンビでは再現できないものではないだろうか。

しかし、渡瀬恒彦の死を聞いたときも感じたが、この作品に出演した名優たちも、ほとんどが故人となった。

監督の深作も脚本の笠原もこの世にはいない。

現在の作り手たちに、このような作品が生み出せるのだろうか。

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無冠の男

伊藤彰彦著「無冠の男 松方弘樹伝」を読んだ。

伊藤彰彦の本は以前に「映画の奈落 北陸代理戦争事件」を読んできたので期待値は高かったが、期待通りの内容だった。

この本でも書かれている通り、日本映画が絶頂期だった1950年代末を過ぎた1960年に映画デビューした松方弘樹は映画が華やかな時代の幻想を追いかけ続けた人生だった、といえる。さまざまなメディアの終焉を看取る形になったのは映画全盛期に「遅れてきた青年」であった松方の宿命だったのだろう。

タイトルに「無冠」とあるように俳優として、その演技が評価されることはなかったが、実録物のヤクザ映画での松方弘樹はもっと評価されてもいいのではと思う。

(個人的には最近、「県警対組織暴力」をDVDで観て、改めて松方弘樹菅原文太の芝居に感銘を受けた。もちろん深作欣二の演出もあるだろうが)

また晩年、「十三人の刺客」に出演した当時のことに触れ、「役所広司でさえ刀が走っていない」と殺陣のできる役者が絶滅しつつあることを指摘していたあたりは、若手俳優はともかくベテランの役所広司クラスはある程度殺陣ができているだろう、と思っていたので読んでいてもショックだった。松方弘樹は時代劇というメディアでも、その終焉を看取る形になったのだろうか。

それにしても、松方弘樹といいい、渡瀬恒彦といい、あれ程血気盛んだった「仁義なき戦い」の出演者たちが次々に鬼籍に入るのをみていると、さすがに年月の速さを感じる。2017年現在、主要キャストで生き残っているのは、小林旭千葉真一北大路欣也ぐらいだろうか。寂しいことだ。

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狂犬死す

俳優・渡瀬恒彦が亡くなった。

若手時代はやくざ映画で、ベテランといわれるようになってからは刑事ドラマで知られる俳優だが、ケンカ最強という伝説でも知られていた。

この渡瀬恒彦ケンカ最強という伝説には、個人的にかなり説得力がある、と思っていた。

というのも渡瀬恒彦は若山富三郎萬屋錦之介亡き後、殺陣がもっともうまい俳優と言われていたからである。

殺陣のうまさは、単なる力の強さや体の大きさなどではなく、運動能力・身体能力や勘の良さがなければできない。近衛十四郎若山富三郎は殺陣もうまかったが、実

際のケンカも強かったといわれている。

よく安岡力也や宇梶剛志などが芸能界のケンカ最強の男として名前があがるが、190㎝近い身長で身体能力が高い日本人はまれであり(安岡力也はハーフだが)

日本人の場合もっとも身体能力が発揮できるのはせいぜい175㎝程度までだろう。(初代タイガーマスク佐山聡も171㎝程度)

そう考えると渡瀬恒彦の174㎝という身長はリアルな説得力がある、また実際に時代劇でみせる殺陣の素晴らしさは、渡瀬恒彦最強説をかなり信憑性のあるものにし

ている。

しかし、残念ながらやくざ映画や刑事ドラマで人気を得た渡瀬は時代劇に出演することが少なかった。

1970年代では、映画「赤穂城断絶」で千葉真一と、ドラマ「影同心」で室田日出男と迫力ある一騎打ちをみせているが(いずれも監督は深作欣二)、2000年代では

高嶋政伸主演の「十手人」というドラマの同心役ぐらいしか記憶がない。(渡瀬が殺陣を披露する場面は少なかったが、その少ない機会に見せる殺陣は見事だった。)

そして最強と言われた男もやはりガンには勝てなかった。

今は故人の冥福を祈るとともに、時代劇役者としての渡瀬恒彦を再評価する上でも、長くソフト化されていない「影同心」シリーズのDVD発売を強く望む。

(平成になってからも何度かつくられた「子連れ狼」なども、本来は渡瀬恒彦主演でリメイクされるべきだった、と密かに思っている。)

※権利関係のせいか、こちらも長くソフト化されていない「鉄砲玉の美学」もこの機会にDVD化できないだろうか。あの映画を観ないと松田優作主演「蘇える金狼」や石

井隆監督「GONIN」のラストが何故あのようなことになったか、若い世代はわからないのではないだろうか。

プロレス歴史観

柳澤健著作の「1984年のUWF」を読んだ。

改めて言うまでもなく、不朽の名作「1976年のアントニオ猪木」の作者によるUWF論であり、冒頭の中井祐樹の少年時代のエピソードから、最後はその中井のある言

葉で締める、という構成は心憎いばかりである。

しかし、この本には既にかなりの賛否両論がでており、個人的にも何人かの登場人物の描写にはやはり疑問を持った。

例えばジェラルド・ゴルドーの鬼畜ぶりやターザン山本銭ゲバぶりは、この本だけを読むと全く違う印象を持ってしまうかもしれない。

この本に書かれている事実は確かに真実かもしれないが、作者の「真実の編集」によって読者をミスリードするおそれがあるのでは、と感じたのである。

ただ、そういった描き方も、著者の確信犯的なものではないか、とも思う。

この本ではUWFを佐山聡を中心に描いており、これまでUWFの象徴とみなされていた前田日明には厳しい評価がされているのだが、これは司馬遼太郎新撰組を、

局長の近藤勇ではなく副長の土方歳三を中心に描いたようなもので、プロレス・格闘技に関して柳澤史観とでもいうべきものを提示したのではないだろうか。

そして著者の意図通り、今後UWFに関して書く時に、この本で打ち出された「UWFとは佐山聡である」という歴史観を無視できないのではないだろうか。

その意味でこの本は、読者一人一人にプロレス・格闘技の歴史認識を問う、リトマス試験紙あるいは踏み絵のような本なのかもしれない。